焼き芋

近所の友達が焼き芋ができたから食べに来ないかと誘ってくれた。



3年ほど前の春、堤防沿いの満開の桜を夫と2人が見ていた時、彼女が焼き芋を持ってきてくれた。



熱々の焼き芋は甘くてほくほくで、夫と2人で笑った。


今まで姑の焼きもちに遠慮して二人きりで花見に行くなんてできなかった。

けれども姑は見送った。



もう誰も夫婦の間に立ちはだかる者は無いのに、神様は何処までも意地悪だった。


口腔ガンの治療をしている夫の主治医から呼ばれた。


「多分来年の桜は見せてあげられないだろうから、今年は2人でお花見をして……」



この先生何言ってるの?

治るって言ったじゃない!

手術したら大丈夫って言ったじゃない!



それから3か月後7月に彼は旅立ちました。


あのさくらの下で食べた焼き芋……

焼き芋…なんてロマンチックじゃないね。

でも、焼き芋でなかったら泣いていたかもしれない。



後から話したら友達も泣いてくれた。


今日も二人で泣いた。

来年くらいには泣かずに食べれるかなー。

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